猫にエッセンシャルオイル(精油)は危険。



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猫は、エッセンシャルオイル(精油)に対して、大変敏感な生きものです。

ネコ科の動物(ライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、チーター、オオヤマネコ、ピューマ、ボブキャット、イエネコ、ヤマネコ)にとって、エッセンシャルオイル(精油)は危険な物質になります。

ネコ科の動物は、精油の成分をうまく代謝する能力がありません。犬は雑食動物で、植物も食べることができて、消化・吸収もできる(代謝できる)のですが、猫は、完全な肉食ですので、植物を栄養として消化・吸収することができません(肉食だからというのが理由のようですが、はっきりしていないようです)。ちなみに猫草は、胸焼けなどや気分転換に(あの草のつんつんした感触や草の香りが好きな猫もいるようです)食べられますが、消化しないで、そのまま便と一緒に排泄されます。

人間や犬などの動物は、エッセンシャルオイルの成分は、体内に取り込まれたあと、肝臓で代謝されて最後は尿と一緒に排出されます(便と呼気からも排出はあります)。が、猫にはこの「エッセンシャルオイルの代謝」に必要な「UDP-グルクロン酸転移酵素」を体内で十分に作ることができません。これが猫にとってはエッセンシャルオイルが毒物になり、中毒になってしまう原因であると考えられています。

わたしがこのことに注目するようになったのは、いまから12年くらい前に、仔猫を飼い始めたときでした。

ハーブや薬草が、猫にどういう風に作用するか、もちろん興味もありましたし、少し勉強もしたりしていましたが、はっきりと「猫にエッセンシャルオイルはいけません」と書いてある本も文献も(勉強不足だと思いますが)読んだことがありませんでした(猫に対するエッセンシャルオイルの問題は最近になってやっとわかってきました。ほんの20年前くらいのことです。コーネル大学の研究者の実験が1998年(⁂)。問題視され始めたのが早くても1990年代)。

飼い始めた仔猫の耳に炎症が起きて、かかりつけの獣医さんへ行った際、ティートゥリーのエッセンシャルオイルが入った塗り薬をつけてもらい、その薬を持ち帰り、毎日つけるようにと言われました。

その薬は、うちの猫が大嫌いで、逃げ回りました。それでも薬だからとつけましたが、なんだか元気がなくなり、うずくまってしまうようになりました。おかしいと思って、すぐにやめましたが、一週間くらいは気づくまで(おかしいと思うまで)断続的に使ってしまった記憶があります。幸い、大事にはならずに、ティートゥリー入りの(香りですぐにわかり、あとで獣医さんに確認しました。自然のものだから、猫にもとても良い「はずだ」と言われました)

自然の環境の草花で、そのネコが好んでその場所にいる。それがそのネコにとっての本当のアロマテラピーなのではないかと思いますが。
自然の環境の草花で、そのネコが好んでその場所にいる。それがそのネコにとっての本当のアロマテラピー(芳香療法)なのではないかと思いますが。

その獣医さんは、いまでもおつきあいさせていただいてる、素晴らしい方です。その方が良くなかったと言いたいのではなくて、その当時(もいまも)、エッセンシャルオイル(精油)は自然のものだから猫にも優しくて、化学成分の薬よりもよい(有用で安全)な「はずだ」というのが、一般的な常識だった(だ)と思います。事実、いまでも使っている獣医さんはたくさんいらっしゃいます。アロマテラピスト、ペットのアロマテラピスト、セラピスト、ペットのエステサロンなどでも使われていますし、なによりふつうに売っている一般書籍に「猫にエッセンシャルオイルは良い」とか「猫に使うアロマテラピー法」が載っていますし、猫用の商品にもエッセンシャルオイルが使われています。「よくないからやめた方がいい」と警鐘を鳴らす方が「ヘン」なのじゃないか、敏感すぎるのではないかと思われることもあるかもしれません。

ただ、わたしは実際に「経験」していますので(ほんとうはうちの猫が経験したのですが。一匹だけの経験ですが)、それ以上の実験はないと思っています。

ティートゥリーに関しては、先にご紹介したコーネル大学の実験では、亡くなったネコもいました。ので、危険性ははっきりしています。ティートゥリーは殺菌作用が有名で、ペットの商品にもいまでも使われているものがあります。

皮膚に塗布するのも、内服ももちろんですが、嗅ぐ(アロマテラピー・芳香)のも避けていただきたいというのがわたしの考えです(人間が必要とする場合は、ネコはそれ以外の場所に「避難」できるように出入り口を確保しておく。あるいは最初はどかして、本人が好む場合のみ許可するなど、工夫をすることと、濃度をものすごく低くしておくのが重要です。ネコ用にアロマをしようとしないこと)。

うちの猫の「ティートゥリー薬害事件」のことがきっかけで、猫に対するアロマやハーブのことをいろいろ調べるようになりました。また、なみきハーブガーデンのお客様にもペットとハーブ、ペットとアロマについて聞かれることが、最近特に多くなってきたこともあります。

犬や猫を飼う方がとても増えていて、家族のように生活していると、当然、飼い主の生活に密着することになって、アロマテラピー(薬草なども含めて)が好きな飼い主さんですと、ワンちゃん、猫ちゃんもそういうものに近い場所で生活することになります。だから、よけいに人間だけではなくて、ペットの薬草についても知っておかなくてはいけないと思っています。

補足:ここで言う、ペットというのは犬と猫のことです。あとの動物や昆虫類(は虫類や鳥類、フェレットなどや昆虫、牛・馬・羊とか家畜関連)に関しては、申し訳ないのですが経験がないので、経験がない動物に関しては、アドバイスやサジェスチョンできるような立場にありません。しかも、そのなかでも、犬に関しては、文献などを参考にするのと、お客様からの情報、アドバイス、経験などを頼りにするしかなく、やはり「はっきりしたことは言えないがある程度は知っている」という範囲でのお答えになります。

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猫に関しては、ずっと「エッセンシャルオイルはやめた方がいい」というスタンスをとり続けています。

さきのティートゥリーオイルを筆頭にして、エッセンシャルオイルのペットに対する需要は、ノミやダニ対策の首輪や塗布するクリーム、自家製のスプレーなどが有名です。

わたしは、何度かペットのアロマテラピー講座へ行ったことがありますが、そこでは、やはりノミ・ダニ用のスプレーをエッセンシャルオイルを使用して「手作り」するのが人気でした。エッセンシャルオイルを用いたものを作る・使うことが問題にもなっていないというのが、そのときの感覚でした。スプレーや嗅ぐことに関しては、ネコに直接塗布する(皮膚に触る、接触する)よりも危険度が低いという考え方がありますが、じゃあいいのか、というと、自分の猫だったらどうしますか?という判断をして欲しいと思っています(どんなに低濃度でも、危険があったり、具合が悪くなるような可能性のあるものを使用せずに、なんとか他に方法がないかなあと考えていただけたらと思います)。





一方で、

エッセンシャルオイル(精油)といっても、ものすごい種類の植物や、それ以上のエッセンシャルオイルの種類(成分別、部位別、種類別など)がありますので、エッセンシャルオイルすべてが悪いとは言えないのではないか、という見解もあります。

たとえば、ラベンダーのようなとても一般的で、おだやか(そうな)エッセンシャルオイルはどうでしょうか。真性のラベンダーには猫に対する毒性がはっきりしている成分(ケトン類:カンファーなど)は少ないと言われています。ただ、ラベンダーにはとてもたくさんの系統や種類があり、そのなかには猫にとても危険な成分(上記成分・ケトン類:カンファー)を大量に含んだスパイクラベンダーという種類もあります。これらは、詳しく、細かく調べてみないと、単に「ラベンダー」という表記になっていることも多くて、商品になってしまったら、もうわたしたちにはわかりません。そういう危険は案外と多いのです。

おっしゃるとおり、すべてが悪いのではない、かもしれないです。が、どれがいいのか、悪いのか、を判断できるかというと、できないです。研究がすすんでいないと言ってしまえばそれまでですが、さきほどの大前提に立って、「ネコにはエッセンシャルオイルの成分をうまく代謝する能力がない」ことをしっかり押さえて、ネコにも効果的なエッセンシャルオイルがある「かも」しれない(わからない)が、使うのは控えますというスタンスをおすすめしたいです。

最低限守るべきことは、

※猫の皮膚には絶対にエッセンシャルオイルを含有したものを塗布しない。

※猫がエッセンシャルオイルをなめたり、内服するような使い方をしない。

そして、ディフューザーのような芳香拡散器でエッセンシャルオイルを部屋や空気中に拡散させる場合は、その成分をたとえ濃度が低くても、猫が吸収する(そして代謝できない)リスクを背負ってまで行う必要があるかどうかをよく検討した上で(自然界でもこれらの植物成分はたくさん漂っているじゃないかという意見もありますが、エッセンシャルオイルは人間が人工的に抽出した高濃度の成分ですので、これは自然だと簡単には言えないと思います。それから、長期的な影響も研究結果もまだないようです)、自己責任で検討してください。

※猫がその芳香を拡散している場所がいやだった場合、すぐさま逃げられる環境にしておくこと。

をお願いしたいと思います。

以下のエッセンシャルオイルの成分は、猫にとって毒性が高いといわれるものですが、これらが入っていないからといって「安全である」ということにはなりません。
注:すべてを網羅していません。ほかにもあるかと思いますのでご注意ください。

ケトン類:ペパーミント、スペアミント、セージ、ターメリック、ローズマリー・カンファー、ローズマリー・シネオール、ローズマリー・ベルベノン、タンジー、ディル、ヒソップ、ユーカリ・ディペス、カンファー、シダー、ワームウッド、キャラウェイ、スパイクラベンダー、ストエカスラベンダー(フレンチラベンダー)、ペニーロイヤル、ルー(ヘンルーダ)、サントリナ、ツーヤなど。

フェノール類:オレガノ(オリガヌム)、クローブ、シナモン・カッシア、(ウィンターおよびサマー)セイボリー、タイム・チモール、パチュリ、ミルラ、バジル、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、ペパーミント、オールスパイス、ブラックペッパー、アジョワンなど。

リモネン類:オレンジスィート、レモン、グレープフルーツ、ベルガモット、ブラックペッパー、ユズ、マンダリン、ディル、セロリシード、フェンネル、レモンバーベナ、アンジェリカルート、ネロリ、フランキンセンス、ユーカリ・ラジアタ、マートル、シトロネラ、レモングラス、サイプレス、ローズウッド、ニアウリ・シネオール、ユーカリ・グロブルス、カユプテ、マジョラムなど。

ピネン類:ヒノキ、サイプレス、パイン、ジュニパーベリー、マートル、フランキンセンス、アンジェリカルート、ローズマリー・ベルベノン、ユーカリ・グロブルス、ローズマリー・シネオール、キャロットシード、ニアウリ・シネオール、ユーカリ・ラジアタ、ローマンカモミール、マンダリン、タイム・リナロール、グレープフルーツなど。

これは、一覧ではありません。ご参考程度です。こういうものを見ると、いかに普通の一般的なエッセンシャルオイルが猫にとって毒になるかがおわかりいただけるのではないかと思います。

一匹でもエッセンシャルオイルによる事故に遭ったり、病気になる猫ちゃんが少なくなりますように。どうぞよろしくお願いいたします。

(⁂)Australian tea tree (Melaleuca alternifolia) oil poisoning in three purebred cats.Bischoff K, Guale F.