簡単気軽にエンジョイライフ~道具を育てる・一緒に育つ#22



 この秋、漆のお椀を買いました。ちょっといい事があったので、毎日の暮らしのなかでずっと使い続けられるものでお祝いしようと思ったのです。ちょうど、誕生日の時期とも重なりましたし。あれこれ考えて、日々のお味噌汁を美味しくいただくためのお椀を買い替えることにしました。

 

 いろいろと見比べて選んだのがこれ。岩手は浄法寺塗りの角椀です。

控えめなつやがいい感じです
控えめなつやがいい感じです
なだらかで、キリッとしたこの形
なだらかで、キリッとしたこの形

 

 朱塗りより黒と最初から決めていたのですが、このお椀は下塗、中塗が朱(あか)であるため、黒漆の下からそこはかとない朱が感じられます。縁にはその朱がほうわりと姿を現していて、「ああ、これはちょうどいい」とほぼ即決でした。ちょうどいい、というのは、今年で還暦(なんと!)を迎えたものですから、赤いものが何か欲しかったのですね。もう一つ、この形も決め手となりました。和の汁物だけでなく、具だくさんスープやポタージュ、クラムチャウダーにシチュウと、和も洋もおおらかに受け入れ、ぴたっと決めてくれるだろうと思ったのです。

里芋とゴボウのポタージュ、パプリカをアクセントに
里芋とゴボウのポタージュ、パプリカをアクセントに

 

 扱い方も、スチールたわしでごしごしとか熱湯をかけたりといった狼藉さえはたらかなければ、ごく普通のやさしい取扱いで大丈夫なようです。普通の汁物なら洗剤も使わずにさっと洗って、豚汁のように少々油っぽいものを入れたら中性洗剤をつけたスポンジで洗い、あとは柔らかい布で拭く、これだけです。こうして、毎日せっせと使い続ければ、きっとつやが増してくるはず。手で何度もなでまわすことになりますから、年月を経るにつれて、下地の朱がもっと浮き上がってくるそうです。

 





 「良い道具は一生もの。使えば使うほど勝手がよくなり、見た目も美しくなる」とは、よく言われます。漆器はその代表選手のようなもの。和でも洋でも日々使い続けて、そうだなぁ、一年に300回、いや、320回くらいは使うかしら。そのペースでいくと、8000回はこのお椀を使えるかな、9000回はかなりハードル高いな、などと計算したりして。

 

 漆器だけでなく、鉄瓶も使いこむほどお湯が柔らかくなるそうです。竹のざるや籠が、長年使えばとろりと飴色になるのはご存知のとおり。いい時間を重ねれば味わいを深めていくのは暮らしの道具も人も同じですね。どちらも時と経験を得て、育っていくのでしょう。

漆のお椀、大切に使ってもっといいお椀に育てます。お椀に似合うように、私も一緒に育っていこうと思います。

 

「文筆屋」 大武 美和子

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