簡単気軽にエンジョイライフ~やってくるものも、迎えにいくものも#30



 台風シーズン到来。台風のピークに向かって降り始めた雨に、外出の予定を取り消して、この間から気になっていた本をパラパラとめくって午後を過ごしました。その本とは『幸せを招く世界のしるし』。題名のとおり、世界各地で信じられている幸せの兆しやしるしを集めた本です。「験かつぎ」とかその人なりのジンクスといったものもあるでしょうが、この本にはそうした人の意志でコントロールできるものではなく、たまたま出会ったり、やってきたものに幸せの予兆を見出すというものが集められているのです。

 

 たとえば、日本のしるしは「扇子を拾う」。末広がりの形をよろこぶ扇子は、拾っても何か良きものを運んできてくれるようです。(ま、扇子を拾うなんて機会がそうそうあるかどうかは別として)。ヨーロッパでは、パンの中に残っている小麦の粒も吉兆になるのだとか。一般的には不吉なイメージとされる黒猫も、ニュージーランドでは目の前を横切ったらいいことのしるしに早変わり。

 

 その他、「手袋を落とす」「血豆ができる」「白ワインをこぼす」「犬のふんを踏む」なんていうのもあります。運悪く出くわしてしまったことや、間違ってしでかしてしまったことを、くよくよせずに「あ、これってこれからいいことが起きるしるしだから」と考え直しましょうということなのでしょう。単なるおまじないのようなものと言ってしまえばそれまでですが、それで気持ちが明るくなるのなら、知って損はないですよね。これもまた、ある種の生活の知恵なのではないかと思います。

 

 この本に載っているのは、ことさらに求めずに向こうからやってくるラッキーチャンスを待つというもの。これとは別に、友だちからも一つ、幸せのしるしを教えてもらったことがあるのですが、それは「散ってくる桜の花びらをつかむことができるといいことがある」というもので、いわば、自分から迎えにいって手にするしるしです。

 





 はらはらと散る桜の花びらなら簡単につかめそう、と思ったらさにあらず。つかんだ! と思った瞬間にするりと小さなピンクは手をすり抜けてしまい、たった一つの花びらを手にするのに悪戦苦闘。やっている途中で、「ああ、こんなふうにがむしゃらになるのがいけないんだな。ちょっと手を差し伸べて、うまく乗っかったらめっけもん、くらいの気持ちじゃないといけないんだな」と考え直した次第です。

 幸せのしるし、いいことの兆し。待つにせよ、迎えにいくにせよ、求めすぎ、頑張りすぎは禁物と肝に銘じて、たくさんのしるしを目に耳に心に留めておこうと思った、嵐の前の静かな午後でした。

「文筆屋」 大武 美和子

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