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なかなか難しいラベンダーの栽培
園芸屋さんにあればどんどん売れていく、しかも割に手に入れやすい価格(ものによりますが)。
ラベンダーというのは、ハーブの代表のような上の写真の薬草です。
ラベンダー(lavender ):シソ科ラヴァンドラ属(ラベンダー属、Lavandula)の半木本性植物の通称 (wikipedia より)
さわやかで美しいその葉っぱや花、姿形すべてが高原の雰囲気で、そっと触ったり風がそよいだりするともう辺りはラベンダーのよい香り、魅力全開です。
こうしてラベンダーは売れていきます。
が、そのあとのラベンダーとのつきあい、実はちょっと難しいハーブです。
寒いときにはわりあいと元気なのですが⦅だめなときももちろんあります。たとえば、雨が続いたとき。また霜が降りたときなど要注意。軒下に移動する、または、ビニール袋をかぶせたりしてしのぎます(蒸れに注意して)⦆ちょっと温かくなってくるととたんに難しくなることもあります。
ラベンダーはわがまま
ラベンダーは確かに日本の細長い列島のなかでは気に入ったところが比較的少なくて、高原気候、地中海性気候にちかいところでは、気に入れば、下の写真のように元気に群生(自生=勝手に育ってくれる)するのですが、なぜこうも難しいのかというのを個人的な考えをちょっと書いておきます。
全国のそういう恵まれた環境、あるいは恵まれた栽培条件のハウスなどでていねいに育成条件を管理されて箱入り娘状態で育ったラベンダー苗は、いきなり全国の恵まれない環境であるなしにかかわらずの園芸屋さんに到着します。
そして、「人気」のラベンダー苗なので、どんどん売れていく。
そして、その箱入り娘状態の育った環境と到着した新しい家の環境が、ほぼ一緒なら、同じ環境ですので元気にして育っていってくれる。
しかし、そうではない場合、が多いのではないかと思うわけです。
その環境の差が悲劇か苦労の始まりになるのですが、これははっきり言って、わたしたちにはわからない(よく観察していくと少しわかることもありますが)。
ですので、以下に書くような個々の品種の好み、基本的な生育条件などをなるべく知っていると、箱入り娘の実家の様子が想像つくので、こちらでもなんとかしてあげることができるわけですと思うのです。
ラベンダーは、育てる地域によって、系統(品種などの種類)を選ぶとうまくいくことがあります。
ラベンダーはだいたい姿形はみんなラベンダーですが、系統によってかなり性質が違うのです。これを知っておくと、失敗が減ります。
ラベンダーを系統で理解すると栽培に有利
今回は、栽培に参考になりそうなグループ分けで、ラベンダーの系統の説明をしてみたいと思います。
分け方は実はいろいろあるようですが、あまり分類してももわけがわからなくなってしまうので(それでなくてもわかりにくい)、3つじゃ少ないような気がするし、8つだと覚えられないしで4つ、その他を入れて5つに分けました(NHK「趣味の園芸」の分け方を参考にしました)。
この色で着色された4つの品種は、別立てで系統とする分け方があります(下の※の項をご参照ください)。学名が違うからです。この4つと、下記の紫色のその他を除く4つの系統、合計8系統のグループ分けをすることもあります。
そういうふうな品種名が出ていても、ラベンダーの苗の特徴がわかりにくいので、今回、ご紹介するこの系統(グループ)分けを少し頭に入れておくと、栽培のときに助かることがあるので、できれば園芸店ですぐに購入しないで、品種名などをメモし、系統を調べてから購入すると、失敗が少なくなると思います(衝動買いは別)。
品種については、いろいろ諸説ありますので、随時気がついたときなどに更新していきたいと思います。ここに記載したものがラベンダー品種のすべてではもちろんありませんのでご了承ください。
間違いなどを見つけられましたら、ご連絡いただければ幸いです。
ややこしいので注意
※名前にラベンダーをつけたりつけなかったりしているのは、呼び名=園芸屋さんなどで売られている流通名にラベンダーとついていていることが多い、ものにはつけてあります。わかりやすいようにつけました(確かにラベンダーとついていないと花が咲いていないとなにがなんだかわからない。また、ラベンダーだから、ラベンダーですということですね、人気ですし)。
なんとなくついている、というのも多いと思います。ご了承ください。
※ラベンダーは、学名はLavandula angustifolia、Lavandulaというシソ科のラバンデュラ属です。科から属へ、それからこの例では、angustifoliaが「」種です。だんだん分類が細かくなっていきます。
この次にくるのが品種名です。
このあとに、別名や和名、あと園芸屋さんなどで流通するときについ呼ばれることが多くてついてしまうようなニックネームやブランド名(富良野ラベンダー)などもありますので、ややこしくなっていきます。
学名がついている苗を選ぶと間違いが少ない(自分が何を育てているのかわからなくなることが少ない)です。
※学名が違うと別種なんじゃないかという問題があります。
本来であれば「学名が違うラベンダー」は別種として系統(グループ)も分けるものなのかもしれません。
が、あれとあれの交雑種など、さらなるややこしい世界になっていく場合も多いので、どんどん細分化されてしまうので、「わかりやすくする」というのを第一義的にして分類しました。
学術的にはどうかというのがあると思われます。その辺はどうぞご了承の上でのご利用をお願いします。
※学名が不明な品種があります。空欄になっています。説明がないものもあり、同じく空欄になっています。
わかりましたら追記していきます。除外するには、ちょっと流通しているかなと思うものはあえて品種名のみでも載せてあります。
ラベンダー系統まとめ
ストエカス系
用途:押し花とかポプリとかクラフト系、浴用など。
フレンチ系ラベンダー、いわゆるフレンチラベンダーです(「フレンチ」と覚えておくと便利)。けっこう丈夫。耐暑性がそこそこあります。ただし、「ちょっとある」という程度なので、風通しは必須です。それから、日光によってだめになることがあるので、日射しが強すぎる場所にも注意します。
うまくいけば、あたりかまわずにどんどん大きくなります。
残念なことに、香りはとても弱く、ラベンダーとしての雰囲気は見るだけです。
比較的冬も大丈夫なので、育てやすいと言われます。梅雨の前に収穫を兼ねて刈り込みます。
この時期に刈り込むことで、梅雨のときに風通しを良くしてあげます。
夏の蒸れもあるので大事です。雨に濡れたら(水に濡れたら終わりと思うくらい注意した方がいいです。地中海沿岸の気候をイメージして世話をしましょう)
この系統では、フレンチラベンダーが有名で、園芸店にもよく売っているので、この特徴を覚えておくと購入時に有利です。夏さえ越せれば、多年草です。
このなかで、
・グリーンあるいはイエローフラワーラベンダー:Lavandula viridis スペイン・ポルトガルに自生するストエカス系の原種。学名からヴィリディスラベンダーとも呼ばれます。グリーン、イエローフラワーという名前は花の色から。日当たりが必須。耐暑性あり。耐寒性はおよそ0度。
アングスティフォリア系
用途:ティー、ワイン、アイスクリーム、クッキーなどのお菓子類、料理類、ビネガーなど調味料類、ラベンダースティック、リース、押し花とかポプリとかクラフト系、精油、浴用、美容など。
コモンラベンダー(英語)、あるいはイングリッシュラベンダーと言われる品種です。寒さに強くて暑さに弱く寒冷地に向いています。
北海道・富良野のラベンダーがこれです。北海道のように涼しい地域でなければ、夏に溶けてなくなってしまうことがあるので注意が必要です。高温多湿が苦手です。
水はけと日当たりがとても好きです。地植えだと上記のような水はけや日当たり、湿気などの問題があるので、地面を盛って植えます。できれば鉢植えで気に入った場所を探して置き換えてあげます。品種が多いです。
・コモンラベンダー:Lavandula angustifolia (いわゆるラベンダーと言えばこれという場合があります。別名:イングリッシュラベンダー)
・オールドイングリッシュ/オールドファッションイングリッシュラベンダー:Lavandula angustifolia‘Vera’ vera=種名:「本当の」という意味。
・ヒッドコート:Lavandula angustifolia‘Hidcote’ トゥルーラベンダーから生まれた品種。寒冷地向き、暑さに弱いです。雨にも弱いです。梅雨や秋雨時にはどっかへ避難させましょう。
・ラバンスパープル:Lavandula angustifolia
・イングリッシュラベンダー:Lavandula (いわゆるラベンダー、またはコモンラベンダーなどを指しますからイングリッシュラベンダーとコモンラベンダーは同じ)このなかの品種が、アロマティコ、センティビアなど。
・トゥルーラベンダー:Lavandula angustifolia
・ロングパープル:Lavandula angustifolia‘Long Purple’
・ロゼア:Lavandula angustifolia ‘Rosea’ 花色がピンク。花穂が短く、株もコンパクト。
・ロイヤルパープル:Lavandula angustifolia‘Royal Purple’
・レディアン:Lavandula angustifolia’LadyAnne’ 矮性。淡いピンク色の花。
・ヨウテイ(羊蹄):Lavandula angustifolia ‘Yotei’ 富良野のラベンダー種。
・マンステッド:Lavandula angustifolia“Munsted”
・スコラ(ブルークッション):Lavandula angustifolia `Schla(Blue Cushion)’
・ドワーフ・ホワイト:Lavandula angustifolia `Dwarf White’
・ヒーチャム・ブルー:Lavandula angustifolia `Heacham Blue’
・インペリアル・ジェム:Lavandula angustifolia`Imperial Gem’ 香りがとても良い。花穂が長くてたくさんの花が咲く多花性。大きく広がった株はとても見栄えがします。
・フォルゲイト:Lavandula angustifolia`Folgate’
・おかむらさき:Lavandula angustifolia ‘Okamurasaki’ 富良野のラベンダー種。富良野ラベンダー(ブランド名)。
・はなもいわ:Lavandula angustifolia‘Hanamoiwa’ 富良野のラベンダー種。
・濃紫早咲 3号(濃紫 3号):Lavandula angustifolia‘Noshi Hayazaki’ 富良野のラベンダー種。
・長崎ラベンダー:Lavandula angustifolia‘Nagasaki lavender’ 長崎県で開発されたイングリッシュラベンダー。城南1号、城南5号(ライトブルー)、リトルマミー。比較的暑さに強くて(耐暑性)、二期咲き(初夏の秋の2回花が咲く)
・ナナ・アルバ:Lavandula angustifolia‘Nana Alba’ 花が白い。コンパクト。
・ナナ・ロゼア:Lavandula angustifolia‘Nana Rosea’ 花が薄ピンク。コンパクト。
・ボシスト:Lavandula angustifolia‘Bosisto’
・ブルーマウンテン:Lavandula angustifolia‘Blue Mountain’
・フォーボーストーム:Lavandula angustifolia‘Foveaux Storm’
・オールドイングリッシュ/オールドファッションイングリッシュラベンダー:Lavandula angustifolia‘Vera’
ラバンディン系
用途:花穂が大きく、花茎が長いので見栄えがします。リース、ドライフラワー、押し花とかポプリとかクラフト系、浴用など。料理などには向かないです。
アングスティフォリアとスパイクラベンダー(L.a.ssp angustifoliaとL. latifolia)の交雑種です。アングスティフォリアに比べれば、耐暑性があります。が、平気というわけではなくて、梅雨や夏前の剪定が必要です。風通し必須。
わりあい大きくのびのびと育つ感じになるので、やたら伸びる印象になりがちで、その先に花が咲くので、切り込むのを躊躇しているうちに1メートルくらいになってしまうことも。幅も出ます。
庭に植えると場所が気に入れば迫力がありますが、迷惑になることもあるので注意しましょう。だから、植木鉢がおすすめですが、そのときにもほかのハーブなどを一緒に寄せ植えないようにした方がいいです。でも、総じてラベンダーとしては育てやすく、成功しやすいと思います。
・スパイクラベンダー:Lavandula latifolia 原産は地中海沿岸、ポルトガル、ユーゴスラビアなど。歯が灰緑色で幅広なところから、別名ヒロハラベンダー。まあまあ耐暑性あり。湿気はだめです。
・ラベンダーグロッソ:Lavandula × intermedia Grosso:香りが強くて甘いので、オイルを作る場合に好まれます。香料やドライフラワー向き。高温多湿に弱い。夏は要注意。けれども、ラベンダーのなかでは、比較的育てやすくて、香りがよくて、クラフトなどに使いやすいので、暖かい地方でラベンダーを育てたかったら、この品種はおすすめです。小さな苗を購入して、最初の夏は剪定しないで、その土地に合わせるようになだめながら育てます。茎が長いのでラベンダースティックを作るのに向いています。
・アラビアンナイト:Lavandula ×intermedia‘Arabian Night’ グロッソに似た品種。花色が濃い。株が大きくなる。花穂がすっと長く伸びている。
・スーパー:Lavandula ×intermedia‘Super’
・ユーロン:Lavandula ×intermedia‘Yuulong’
・アルバ:Lavandula ×intermedia‘Alba’ 白色の花。
・ディリーディリー:Lavandula ×intermedia‘Dilly Dilly’ 耐暑性があるのと比較的蒸れにも強い。花穂が長くて見栄えがいいので、クラフト系に。濃い青紫色。
・ボゴング:Lavandula ×intermedia‘Bogong’
・インプレスパープル:Lavandula ×intermedia‘Impress Purple’ 耐暑性がわりとある。蒸れにも強い。香りが甘く、クラフト系に向いている。形がコンパクトにまとまりやすい。
・プロバンス・ラベンダー:Lavandula ×intermedia ‘Provence’ 花は薄青紫色。
・シール:Lavandula ×intermedia “Seal” 明るい藤紫色。ドライフラワーにおすすめ。
・アロマティコ(別名イングリッシュラベンダー・アロマティコ):
・スーパーセビリアンブルー:夏越し・冬越しが可能な数少ないラベンダー。
・グロスブルー:Lavandula×intermedia’Gross Blue’ 濃い紫色。
・グレイヘッジ:Lavandula ×intermedia‘Grey Hedge’
・エーデルワイス:Lavandula ×intermedia‘Edelweiss’
・ラージホワイト:Lavandula ×intermedia‘Large White’
・ロングホワイト:Lavandula ×intermedia‘Long White’
・ロイヤルキング:Lavandula ×intermedia‘Royal King’
・スコティッシュコテージ:Lavandula ’Scottish Cottage’ 多花性。耐暑性あり。病気にも強いといわれます。高温多湿によく耐える日本に向いている品種といわれます。ただし、多湿に弱いので、水はけに注意します。これはどのラベンダーでも同じですが、暑さに強いというと、つい湿気も大丈夫かとほったらかしてしまいがちなのです。雨が降るとまずいです。
プテロストエカス系
用途:花穂が大きく、三つに分かれる。花茎が長いので見栄えがします。リース、ドライフラワー、押し花とかポプリとかクラフト。
暑さには比較的強いが耐寒性がないので、冬は室内、なので、基本的には植木鉢がおすすめです。鑑賞、切り花、リースなど用に向いています。うまくいくとずっと通年咲いています。
・ムルチフィダ(レースラベンダー/ファーンラベンダー):Lavandula multifidaレースのようなぎざぎざの細かい葉っぱ。青っぽい紫色の花。上につきだした花の先端のとんがり(花冠)が特徴的。暑さにも弱い。香りがとっても少ない。
・ブッチー:Lavandula pinnata buchii(これもファーンラベンダーと呼ばれるようです。ピナータとも)葉っぱが細かくぎざぎざしています。白っぽい葉っぱの色が特徴的。濃い紫色の花。レースラベンダーとは別種。細かい毛の生えたシルバーの葉っぱ。
・カナリーラベンダー:Lavandula canariensis Mill. スペイン領カナリア諸島原産。耐寒性なし。
その他
挿し木が簡単(といってもほかのラベンダーに比べてという意味。なんでも挿せば出るというほどではないです)。
変種にカンディカンス:Lavandula dentatavar. candicans。葉っぱがぎざぎざしていて(歯のように)特徴があります。高さが出て、ぐんぐんとけっこう背が高くなります。日本では、デンタータラベンダーなどで出回っています。
・ソーヤーズラベンダー:Lavandula lanata Sawyears Hybrid ラナータ×アングスティフォリアの交配種。ラナータは原種のひとつ。別名:ウーリーラベンダー。細かい毛の生えたシルバーの葉っぱが特徴的。
・スィートラベンダー:Lavandula × heterophylla スパイクラベンダーとデンタータの交雑種。通称がスィートラベンダー。ヘテロフィララベンダーのこと。四季咲きで丈夫だといわれます。背丈が高くなります(1メートル)。香りが甘くて強いところがスパイクラベンダーに似ているといわれます。姿形はトゥルーラベンダーに似ているといわれます。濃い紫色。
・ウーリーラベンダー:Lavandula lanata 原産は、スペイン南部、山岳地帯の乾燥地。濃紫色。耐寒性が強い。ラナータとも呼ばれます。細かな毛の生えたシルバーリーフが特徴。
結論(個人的な見解)
もしもラベンダーを一時的にではなく、株としてきちんと育ててみたいということであれば、まずは生存させて一年、そして株をできれば大きく元気にしたいものです。
ので、その土地に合った品種を、上記の中から探して根気よく試行錯誤します。
関東より南の地域では、夏場の高温と湿気がネックなので、自己責任でお願いしたいのですが、わたしはデンタータ種と、ラバンジン系をおすすめします。わりと強いですし、株を増やして、大きくすることも可能です。
その場合、できるだけ風通しの良いところに植えた方がよいです。日当たりか風通しかの究極の選択の場合には、風通しを選んだ方が良いと思います。
水はけも重要なので、もしも地面に植えるのでしたら、盛り土をして高くこんもりとさせてから植えると水はけが「なんとなく、回りよりも」よくなります。
庭よりも、実は玄関先などの方が日当たりと風通しがよく、吹きさらしになり、向いていることがあります。
原因がよくわからないので、大変ショッキングで落ち込みます。
枯れてみっともないのですが、刈り込んでしばらく放置してあげると、不思議なことに芽が出てくる「場合もあり」ます。